ガラス玉撮影
ガラスの球体を使った撮影について。基本的に宙玉と似通った部分があるものの、違いも大きい。
ガラス玉を使って撮影すると、魚眼レンズの様に周囲の風景を凝縮した写真にできたり、あるいは被写体を歪めて拡大したりと面白い写真を撮ることが出来る。値段も1000~1500円程度と安いので手を出しやすい。
問題点
ガラス玉撮影は様々な問題点があり、撮影に苦労する点が多い。
- 玉の中は上下反転
- 知らないとハマりやすい問題点
- 玉の中の景色を正しい向きにしたい場合は写真を上下反転させる必要がある。
- 像とガラス境界は位置が違う
- 玉内の像にピントをあわせると玉の表面にピントを合わせる事になり、表面と玉の輪郭(側面)はちょっと奥行きが違うわけだから輪郭がボケてしまう。
- 絞り込んで撮る、遠くから望遠で撮る事で緩和可能。
- ガラス表面への映り込み
- 宙玉レンズと違い、ガラス玉撮影面に対して周囲の景色が映り込む。
- 太陽光下では単純に光の反射も発生するため、PLフィルターを使ったほうが良い。
- 近くで撮影した場合、撮影者も映り込む!
- 火事、火傷
- 全方位レンズなので太陽光を集め熱を発生させてしまう。
- 枯れ葉があれば燃える、手で持っていれば火傷する事に
- 写りは良くない
- ガラス玉内の像は綺麗とは言い難く、チープな感じ
適した使い方
雰囲気的な写真
細かい描写ではなく、全体の色合いや光と影のコントラスト、シルエットなどがメインの写真に向く。
夜景、イルミネーション
光のボケを背景にしつつ、玉の中に風景を写し込める。光ボケを大きくすれば背景が明るくなり、玉の中は外周側が暗くなるため、境界が見えやすく玉の輪郭がハッキリする。
露出、絞りの面でも有利で絞って撮りやすい。玉内の像が多少ピンぼけでも問題ない、という辺りも向いている。
晴天下の花畑
玉の中に写っているモノが分かりやすく、風景をうまく閉じ込めたような感じになる。
うまく太陽光を使えば玉の輪郭をハッキリさせることが出来るし、青空と花畑を合わせて入れても良い。
夕日
夕日は色とシルエットで風景をみせる事ができるので、向いている。玉の輪郭もハッキリさせやすい。
映り込みの問題も逆光になるため起きにくい。
ガラス玉としての撮影
玉内像にあまりこだわらず「ガラス玉のある風景」の様な撮り方をすると、様々な問題に悩まなくて済む。
こういう写真の場合、玉は小さめの方が向いているかも。
適していない使い方
花や小物などのアップ
被写体との距離が近いと玉の輪郭がボケてしまいやすいし、玉内像もピントが合っていない部分が目立ちやすいためあまり向いていない。アップで写そうとすると歪みの影響も大きくなる。
桜の花であれば、花単体のアップの様な使い方は難しく、枝単位くらいになると使いやすい。
ポートレート
ピントが合わない、歪む 等で上手く使えている事例が殆どない。
細かい風景写真
玉内像はピントと歪みの問題から細かい形の把握はし辛いため、風景写真には向いていない。何となくボヤけて微妙な写真になりがち。
シルエット等で何となく把握できるような風景であれば使える。
宙玉レンズとの比較
レンズに装着して使う宙玉レンズと比べて違う点。
入手のしやすさ
宙玉レンズの場合、買うとそこそこの値段(5000~1万円程度)するし、自作するとなると結構面倒なので入手のしやすさ、手の出しやすさとしては微妙なところ。
ガラス玉は1000~1500円程度でAmazonでいろいろなのが売ってるので簡単に手に入る。
レンズを選ばない
宙玉レンズの場合、どうしても近くを撮影する事になるためマクロレンズになり、筒の長さや玉の大きさを考慮すると広角系マクロレンズという風にかなりレンズが限定される(標準ズームにエクステンションチューブをつければOKなので条件自体は厳しくない)。
ガラス玉の場合、基本的にどんなレンズ/カメラでも撮れるので、撮影小道具として使い勝手が良い。スマホでも使える。
撮影のしやすさ
宙玉レンズは装着の手間(特にエクステンションチューブを使う場合)があるものの、装着してしまえばあとは自由に撮影できる。
ガラス玉は、置いて撮るか持って撮るかだけど、それぞれ問題がある。持って撮るとなると片手になるため、カメラの操作がしづらくなる。置いて撮る場合は転がらない様にしないといけないし、土などがついて汚れるという問題もある。
置き撮りの場合、玉の内部が上下反転する問題が大きくなる。内部に合わせて写真を上下反転すれば、上に地面がある写真が出来上がってしまって違和感が出てしまう。また、地面に置き撮りすると地面が写りやすくなるという問題もある。
映り込みと光の反射
宙玉レンズは玉の表面が殆ど筒の中に入った構造になっているので、玉の表面に周辺風景が反射で写り込んだり、太陽光の反射で白くなったりしない。
ガラス玉の場合、表面に反射が発生してしまう。PLフィルターを使うことである程度は抑制できるが、球体で光の反射が一定方向ではないため完全に取りきる事はできない。発生の度合い撮影環境にかなり依存する。
近くから撮影すると、撮影者が玉に写り込むという問題があり、これはかなり厳しい。よく注意する必要がある。
ピントの合わせやすさ
宙玉の場合、小さいガラス玉に対し接写する事になるため、被写体(玉の中心に映る像)にピントを合わせると、玉の輪郭がボケてしまう。これを回避するにはギリギリまで絞って撮る必要があり厳しい。一方で玉の中心部についてはピンと合わせしやすい。
ガラス玉の場合、離れて撮影できるし玉のサイズも大きい(直径5~8cm)ため、被写体にピントを合わせても玉の輪郭がハッキリしやすい。ギリギリまで絞らなくてもそれなりの写真が撮れる。一方で玉の中心についてはピント合わせが難しくなる。
玉内像の具合
宙玉の場合、玉と被写体の距離は自由に調整できる反面、玉とレンズの距離は調整範囲が狭い。
ガラス玉の場合、玉とレンズの距離を自由に調整できる。コレによって玉内像の写り具合を調整できるため、写真としての自由度は比較的よくなる。ただしこれは置き撮りの場合であって、手で持つと自由度は下がる。
ガラス玉を拡大鏡のようにして小さいものを大きく写す場合、離れて撮るとうまくいく。
置き撮りと持ち撮り
ガラス玉は置いて撮るか持って撮るかという選択があるので、それについて。
持ち撮り
手で持って撮る場合。手が写るという問題があるのはもちろんとして、写真の上下を反転させた場合に手の向きも上下反転するという問題がある。持ち方に工夫が必要かもしれない。持ち方がダサいとそれが写真に影響するというのもある。
手で持つとなるとカメラは片手操作になる。メニュー操作などがし辛い、MFピント合わせができない、PLフィルターの回転ができないなど意外と面倒くさい。
手の人間感を減らしたくて布手袋をしてみた結果、ガラス玉は滑りやすく落としやすいという事が分かった。手袋を使うなら革手袋が良さそう。
手以外のモノ…棒状のモノで支えて持つ、三脚に乗せるなどする場合、やはりそれが写真に写り込むという問題があるのと、バランスを取るのが難しい、風や揺れで落ちるとガラス玉が割れるというリスクが有る。
置き撮り
地面や床に置いて取る場合。コレはどうしても上下反転させた場合に違和感が出やすい。また置くの自体が難しくて、下が凸凹してると台座に乗せるような場合はバランスが取りにくい。直接置けば土や水滴がつくし転がるリスクが増える。
地面に置くと構図などの自由度が減り、撮影時はカメラも地面すれすれになりがち、という問題もある。
一度安定して設置できれば、後は撮影に集中できるという利点が大きい。
上下反転への対策
ガラス玉、宙玉共に上下反転してしまうという問題があるので、そこへの対策をまとめる。
写真を上下反転させる
撮影後、現像時に上限反転させる事で玉の中の像を正しい向きにする。基本的な使い方の一つ。
像が正位置になる代わりに、背景や前景が逆位置になってしまう。背景は基本ボケているので逆位置でも気になりにくいが、置き撮りの場合は地面が上に来て違和感が出やすい。手持ちや棒に乗せて撮る場合も、上側にそれらが来るのが違和感につながりやすい問題がある。
上下逆で成立する被写体
玉内像が上下逆でも良く見える写真にする、という手法。
風景をシルエットや色合いで見せるような写真であれば、上下が逆でも何となく良い風になったりする。
樹の枝(の先の花)などは上下逆でも割りと良い雰囲気になる。
上下逆にすると面白い! という考え方で撮影すれば、面白い写真が生まれる事も(ただし、失敗してる事例の方が多い)。
上下が関係ない被写体
上下とか特に関係ない写真にしてしまおう、という手法。
一面の花畑とか、空、一律な模様などは上下が特にないのでそのまま使いやすい。
被写体の一部をクローズアップして撮るような場合も上下はあまり関係なくなる…事もある。
鏡面
鏡面反射している被写体であれば、鏡面を堺に上下が同じ景色になるので結果的に上下逆でもOKな写真になる。
水面を下にして撮影、という技法がよく使われている。
玉の輪郭ボヤケ問題への対策
球体の撮影であるため、真ん中にピントを合わせると輪郭がボヤけるという問題への対策をまとめる。
色や明るさで輪郭を出す
輪郭自体がボケるのは許容し、輪郭部の色や明暗差で境界をハッキリさせようという対策で、ガラス玉撮影の基本的な技法。
玉の真ん中を堺にして上下に色や明暗が異なる風景にすると、玉の中が上下反転するので境界がハッキリ出る。地平線や水平線、上半分を空にするなど。
背景がボケるので、光の玉ボケを大きめに入れる事で境界のハッキリする背景にしやすい。
玉に光を入れる
輪郭部に太陽を入れる事で、太陽光がガラス玉の輪郭を覆うような形になって輪郭がハッキリしやすい。晴天下での撮影では意識して太陽を輪郭に入れると良い。
光の射し具合で輪郭がハッキリするケースがあるので、玉の位置や撮影角度を色々試してみる、玉を持ってウロウロしてみるというのが有効。
模様で輪郭を出す
背景やガラス玉の境界あたりを一様な模様にすると、模様の変化によって玉の境界が分かる。
絞って撮る
絞って撮る(F値を上げる)事でピントが被写界深度が深くなり、輪郭がハッキリしやすい。
欠点の一つはシャッタースピードが遅くなる点(絞り優先の場合)だけど、ガラス玉撮影は細かい描写が必要ない写真になるわけだから、ISO感度を上げてしまえば良いと思う。
欠点のもう一つはボケ度が減る点で、ガラス玉撮影では基本的に背景はボケるわけで、そのボケ像は重要になる。その調整がしにくくなるのは問題。
輪郭にピントを合わせる
被写体の方をボカして、輪郭にピントを合わせるという解決方法。
ボカしてOKな被写体は少なく、コレが上手く行ってるケースは少ないが、解決方法の一つとして頭に入れておくと良いと思う。
玉の中央と端の間辺りにピントを合わせる事で、輪郭を少しハッキリさせつつ玉内像のボケも抑えて…という調整が可能。
望遠で撮る
被写体は玉内像になるので、玉から離れて望遠で撮る事で被写界深度が深くなる。
ズームレンズで背景との兼ね合いも調整しつつ撮るのが現実的。